ここでは、さまざまな体表の痛みに対して影に潜む内科疾患があることについてご紹介したいと思います。
皆さんは「関連痛」という言葉をご存知でしょうか。
「関連痛」とは身体のある部位(内部)が原因で起こる痛みを、原因となる部位から離れた部位(外部)に痛みを感じることを指します。
関連痛は主な原因は内臓ですが、それ以外にも筋肉や関節の障害によっても起こるとされます。
なぜ離れた部位に痛みが起こるかというと…
我々は痛みや温冷感・触圧覚を感じる時、それらを感じ取った末梢神経が脊髄に入力され、神経線維を通じて脳幹、間脳、大脳へと伝達され、初めて痛みが認識されます
。
内臓異常からの痛み刺激が神経を通じて脊髄レベルで集約される時、皮膚からの痛みを入力されるルート通ります。一般的に皮膚由来の痛みを感じる神経が多いため、脊髄に入力してきた痛み情報が脳に伝達される際に、皮膚からのものであると脳の誤認識を引き起こします。さらに、内臓由来の痛みは痛覚線維が少ないことが特徴とされ、局在が不明瞭になり、より皮膚からの痛みを誤認識される状態にあります。
我々は肩こり、腰痛を感じると一般的に痛みを感じる部位に原因があると考えますが、以下のように本来は内科疾患に原因が起こっている場合も考えられます。
ではどのように鑑別するか、関連痛にはどのような疾患が多くみられるのか、お伝えしたいと思います。
①狭心症、心筋梗塞
⇨左肩・顎・背部痛
②胃・十二指腸潰瘍
⇨左肩痛
③胆石発作
⇨右肩痛
④腸閉塞
⇨背部痛
⑤尿管結石
⇨腰痛
凝りと思って改善しょうとしても、なかなか変化が感じられない、どんどん痛みが強くなっている。この場合、以下のような各疾患の症状がないか確認する必要があります。
①狭心症、心筋梗塞
○労作性狭心症
前胸部に絞扼感、圧迫感が3〜5分間くらいある。
状態として心筋の酸素供給量の増大に対して、酸素の供給が確保できないもので、階段を上がったり荷物を持ち上げるといった労作時に痛みを感じ、安静にすると楽になる特徴がある。
○異形狭心症
喫煙者、常習飲酒習慣のある方がなりやすい。
夜間から早朝、安静時に起こる前胸部痛(数分から15分程度持続)がある。
○心筋梗塞
突然の強い胸部痛や圧迫感がある。
冷汗、吐き気、嘔吐、呼吸困難が現れる。
階段や坂道を登る時に症状が出やすい。
②胃・十二指腸潰瘍
左肩痛の他にみぞおちの痛みが、食事中から食後に起こることがある。
腹部膨満感、悪心、嘔吐、胸やけ、食欲不振などを繰り返す。
十二指腸潰瘍の場合、空腹時、特に早朝に痛むことが多い。
潰瘍が進行した場合は下血が起こり、タール便といってどす黒い便が出ることがある。タール便が起こった場合でも痛みがない人もいるため、要注意。
胃潰瘍では40〜60代に多く、心窩部痛が食後に現れる。
十二指腸潰瘍では20〜40歳代の男性に多く心窩部痛が空腹時に現れる。
③胆石発作
右肩や右背部に放散痛が起こり数十分から3〜4時間持続し、悪心、嘔吐を伴う。
他に食後(特に脂質に富む食事の場合)や夜間に突発する右季肋部痛、心窩部痛などがみられる。
特に40代女性、肥満、多産の人に多いとされる。
④腸閉塞
腹部手術の既往がある人に多いとされる。
腹痛、吐き気、嘔吐、排ガス、排便の停止、腹部膨満感などがみられる。
腸が捻れることで発症した場合は血流が途絶えることで腸機能が停止してしまうため緊急を伴うものがある。
⑤尿管結石
突然の激痛となる。じっとしていても痛みが続く。
血尿、冷や汗、顔面蒼白、嘔吐、下痢、強い尿意と残尿感を伴う。男性に多く、再発のリスクが高いとされる。
いかがだったでしょうか?
当院では、患者様のお身体の悩みに対して相談を承っております。
皆様のご来院をお待ちしております。